
『冬の旅 Wintertime Voyage』(河出書房新社)著者:桜井 鈴茂
最後のフリーター小説
昔、フリーターという言葉もなかったころ、大学を出て、自由を求めて仕事に就かない人がいた。そんな時期があった。90年代のことだ。日本にも経済的な余裕があった。アルバイトをしながら、自分のやりたいことをやるために、夢を追いかける――なんて、ことを恥ずかしくなく話せる時代があったのだ。そうした社会背景から滲(にじ)み出たような小説もあった。「フリーター小説」と呼ばれた。時代の気分を切り取った小説だった。具体的には鈴木清剛や岡崎祥久、一時期の角田光代もそうしたジャンルに入るような小説を書いていた。
桜井鈴茂は、「フリーター小説」を一過性のものとはみていない。フリーター小説の「その後」を真剣に考え続けてきた作家だ。そのことがこの小説を読むとよくわかる。
東京郊外の町で「例の惨殺事件」が起こり、コンビニの同僚が失踪し、公園では爆弾が見つかった年。突然、楢崎が「おれ」の前に現れ、「ロックン・ロールをまっとうするしかない」と言い放つ。
どうする、おれ。40代フリーターが人生を賭けた戦いに打って出る。最後のフリーター小説、完結。
【初出メディア】
日本経済新聞 2011年2月2日
http://www.nikkei.com/

6 時間前
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