
2024年7月3日、カザフスタンのアスタナで開催された上海協力機構(SCO)首脳会議の傍らで行われた会談で、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(右)と中国の習近平国家主席が握手を交わした。(セルゲイ・グネーエフ、スプートニク、クレムリン・プール写真、AP通信経由)
By Guillaume Ptak – Special to The Washington Times – Wednesday, July 8, 202
【キーウ】ロシアが占領するドネツク州のカランスキー採石場では、中国製機械の導入によって10年以上稼働停止していた産業施設が再稼働した。
採石場は、壊滅的な被害を受けた港湾都市マリウポリからほど近いミルネ村近郊に位置し、2008年以降は操業を停止していた。ロシアが2022年にウクライナへ侵攻した後、占領当局は採石場の再開に着手した。
2023年11月、ロシアが任命した自称「ドネツク人民共和国」政府トップだったエフゲニー・ソルンツェフ氏は、砕石・選別設備を手掛ける中国企業2社との合意を発表した。
占領当局が公開した写真には、中国企業関係者が中国、ロシア、人民共和国の旗を背に、ロシア側当局者と並んで写っている。採石場で生産された砕石は、占領地域での建設事業に利用されている。ロシアは「復興」と称するが、ここはロシアが起こした戦争で破壊された地域だ。
地元住民の間では、この採石場は「中国採石場」と呼ばれているという。
このような動きは、他の場所でも見られるようになっている。中国企業は、多くの場合ロシア企業を介しながら、ロシアが占領したウクライナ各地で占領経済の構築と維持を支えている。
ウクライナのNGO「東部人権グループ」とシンクタンク、戦略・安全保障研究所の報告書によると、中国企業少なくとも17社が、ドネツク、ルハンスク、ザポロジエ、ヘルソン各州の占領地域で何らかの事業に関与している。
事業内容は、採掘機械や建設機械の供給から、通信、金融サービス、輸送網、インフラ整備にまで及ぶ。
中国政府は、ロシアによるクリミア併合や、ウクライナ4州の領有について正式には承認していない。中国政府は一貫して国家主権を尊重し、和平交渉を支持するとの立場を取っている。
しかし現実には、中国企業の事業活動がロシアによる占領地域の孤立を緩和し、将来的なウクライナによる奪還を困難にしている。
東部人権グループのビラ・ヤストレボワ代表は「中国は法的承認を伴わない事実上の統合という形で行動している。ウクライナ領土の併合を正式には承認していないが、中国企業はロシア企業を通じて占領地域へ大量に進出している」と語った。
ウクライナの政府や専門家は、さらに深い変化が進んでいるとみる。占領地域はウクライナ経済圏から切り離され、ロシア・中国を中心とし、イランなど制裁対象国とも結び付く新たな経済圏へ組み込まれつつあるという。
ヤストレボワ氏は「占領経済の新たなモデルを生み出している。不透明で軍事色が強く、秘密ルートや政治的便宜への依存によって成り立っている。域外の供給者らは、地域発展に興味はなく、その機能を利用して利益を得ている」と指摘した。
■鉱業と重機
中国の関与が最も顕著なのは重工業分野だ。
戦争と制裁によって孤立したドンバス地方の占領地域では、中国製設備が欧州製やウクライナ製機械に代わって着実に導入されている。東部人権グループの報告書では、三一重工、黎明重工科技、山東鉱機、太原重工、武漢に本拠を置く冶金エンジニアリング機関WISDRIなどの企業名が挙げられている。
報告書によると、三一重工は2024年にドンバス地方の炭鉱へ坑道掘削設備を供給したとされる。山東鉱機は「コムソモレツ・ドンバッサ」炭鉱のコンベヤー設備に関与したとされ、黎明重工科技は占領下ドネツク州で鉱物資源事業を展開する「ネドラ」グループへ設備を供給したと報告されている。WISDRIには製鉄所近代化事業への参加が打診されたという。
構図は一方的だ。中国企業は設備や技術、消費財を供給する一方、占領地域から搬出されるのは石炭などの原材料が中心となっている。報告書によると、占領下ルハンスク州では中国製品への依存が特に強く、2023年には輸入全体の約60%を中国製品が占めた。
米シンクタンク「欧州政策分析センター(CEPA)」のクリストファー・ウォーカー副所長は、占領地域での中国の活動は、ロシアへの包括的支援の一環として捉えるべきだと指摘する。
ウォーカー氏はワシントン・タイムズに対し「ウクライナに関して、中国の商業活動がこれまでのロシアへの大規模な支援と切り離されて行われているとは考え難い。中国の支援は、ロシアが対ウクライナ戦争を継続する能力にとって極めて重要だ」と述べた。
■人民元と制裁回避
金融分野でも中国の関与は拡大している。
東部人権グループによると、占領地域では現在約79の銀行支店が人民元による取引を取り扱っている。一部地域では人民元がロシア・ルーブルに次ぐ基軸通貨となっている。
中国の決済手段も制裁回避に利用されている。アリペイ、ウィーチャット・ペイ、暗号資産送金、通信アプリ「テレグラム」を利用した両替サービスなどが、西側の金融制裁を回避する手段として使われている。
こうした仕組みにより、中国やロシアのほか、カザフスタン、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、キルギスなどを経由した輸入や貿易ルートが維持されている。
戦略・安全保障研究所のマクシム・ブチェンコ氏は、この動きを「影の統合」と呼び、国際法上の「危険な前例となる」と警告している。
人民元は日常生活やロシア政府の予算執行でルーブルに取って代わるものではないが、企業向け輸入や制裁回避では重要性を増している。
■ファーウェイと情報統制
最も戦略的な分野は通信かもしれない。
東部人権グループによると、占領地域の数千基に上る携帯電話基地局で中国製通信機器が使用されている。
また、占領地域で事業を展開するロシア系通信会社「ミランダ・メディア」は、光通信端末やサーバー、ソフトウエアライセンス、中核通信設備などにファーウェイ製機器を導入しているという。
問題は単なる通信網の整備ではない。占領地域では通信インフラが長らく統制や弾圧の手段として利用されてきた。
ロシア当局は住民をウクライナの通信網から切り離し、ロシア製SIMカードへの切り替えを進めるとともに、携帯電話利用をロシアの身分証明書や行政サービス、宣伝活動と結び付けている。
中国製通信機器は、この支配体制をより恒久的な技術基盤によって支えている。
ヤストレボワ氏は「これは単なる貿易や設備の輸入ではない。占領地域の文明的、技術的、政治的な進路そのものを変え、将来的なウクライナや欧州の法制度、経済、人道的空間への復帰をより困難にしようとする試みだ」と語った。
■道路、港湾、宣伝
中国の関心は物流インフラにも向けられている。
報告書は、中国、ロシア、ウクライナ占領地域を結ぶ輸送回廊として、満州里―ザバイカリスク鉄道ルートや、ロシアの黒海・アゾフ海航路、「ユーラシアン・アグロエクスプレス」などを挙げている。
中でも重要なのが、ロシアの幹線道路R280「ノボロシヤ」だ。ロストフナドヌからマリウポリ、メリトポリ、ジャンコイ、シンフェロポリを経てクリミアへ至るルートだ。
ロシア政府はこの道路を「新たな地域」のためのインフラと位置付けているが、実際にはウクライナ南部占領地域全体を結ぶ軍事、物流、産業輸送の戦略的大動脈となっている。
一方、クリミアは以前から中国の関心を集めてきた。
ロシアが2014年にクリミアを併合する前、ウクライナ政府は中国資本による深水港建設計画を協議していた。クリミア半島を広域海上物流ネットワークに組み込む構想だったが、2014年のマイダン革命とロシアによるクリミア併合で頓挫した。
その後も、中国と関係する船舶がセバストポリ港へ寄港したとの報道や、ケルチ海峡トンネル建設構想を巡る協議が伝えられている。ただ、中国政府は制裁対象となることを避けるため、正式な関与は控えている。
一方で、ウクライナには中国の直接的な関与を過大評価すべきではないと警告する専門家もいる。
シンクタンク「アゾフ開発エージェンシー」の創設者、コスチャンティン・バトズスキー氏は、中国はどちらにも部品を売っていると主張。「ウクライナのドローンに使われている部品の50~70%は中国製だ。それは中国がウクライナを支援していることを意味するのか。中国はロシアにも公然と機材を販売しているが、ウクライナにも販売している。誰にでも売っている」と指摘した。
世界の大半が法的地位を認めていない占領地域で、中国の国有大手企業が公然と事業を展開する誘因は乏しい。そのため実際の事業は、中小企業やロシア企業を経由して進められるケースが多く、実態の確認は容易ではない。
しかし、問題は経済だけではない。
ロシアは、中国からの訪問や契約締結、文化交流など、あらゆる中国との接触を「占領地域は孤立していない」ことを示す宣伝材料として利用している。中国のブロガーや記者、芸術家らも占領地域を訪れている。特に批判を集めた例として、中国人歌手の王芳氏が、2022年のロシア軍空爆で数百人の民間人が死亡したマリウポリ劇場跡で「カチューシャ」を歌ったことが挙げられる。
ヤストレボワ氏は「占領地域との外部との交流はいかなるものであれ、ロシアの宣伝活動に利用される」と指摘した。
一方、ウォーカー氏は、中国の行動は中立を掲げる中国政府の公式な姿勢と矛盾すると述べた。「中国はこの戦争で決して中立ではない。中国はロシア側に賭けている」
■将来の重い負担
ウクライナが将来、占領地域を奪還したとしても、ロシアが築いた行政機構を解体するだけでは済まない。通信網や金融インフラ、産業機械、物流網など、ロシアと中国に結び付けられた仕組みそのものを置き換える必要に迫られる可能性がある。
ウクライナの専門家は、この状況が長引くほど再統合に要する費用は膨らむと警告する。
東部人権グループは、西側諸国には二次制裁や輸出規制、物流会社や金融機関、仲介業者への圧力など活用できる手段があると指摘する。ただ、中国企業を直接標的とすることは政治的にも経済的にも容易ではない。
実際、ウクライナ自身もドローンや電子機器を中心に中国製部品への依存度が高い。
しかし何もしなければ、高い代価を支払うことになる。ロシアは中国などの権威主義国家と結び付いた新たな経済圏へ占領地域を組み込もうとしているからだ。
設備が整い、物流網も強化された占領体制は、将来それを覆すことをさらに困難にする可能性がある。

1 週間前
5





English (US) ·
Japanese (JP) ·