「中国こそが世界の中心」をアピールか?米トランプと露プーチンを相次いで出迎えた習近平の目論見

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わずか1週間の間に、トランプ大統領とプーチン大統領を相次いで北京に迎えた習近平国家主席。この動きに世界のメディアがさまざまな見立てを報じていますが、中国サイドの「本心」はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』ではジャーナリストの富坂聰さんが、西側の報道機関が示した中ロの関係性に対する「疑問」を提示。さらに両国が現在の国際秩序をどのように捉えているのかについて考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:トランプが去った直後にプーチンが訪中 中ロの意図はアメリカへの挑戦なのか

中ロの意図は「アメリカへの挑戦」なのか。トランプとプーチンを相次いで迎えた習近平

いいと思うよ。しかし、私の時ほど華々しい式典だったとは考えていない──。

これはドナルド・トランプ大統領が、米中首脳会談直後の北京を、ロシアのウラジミール・プーチン大統領が訪れた件について訊かれ、答えた言葉だ。

グレート・パワー・ゲームと評されることの多い現在の国際情勢にあって、1週間のうちに米中、中ロという大国のトップが北京で会談するのは珍しい光景だ。

メディアも過剰反応ぎみだった。

こんなタイミングになったのは偶然で、アメリカのイラン攻撃によってトランプ大統領の訪中が約1カ月延び、日程が詰まったのがその原因だ。

ただ、そのイラン攻撃がなくても米中首脳会談後、1カ月のうちに中ロ首脳会談が行われたとなれば、やはりアメリカの心中は穏やかではなく、世界に与える影響も大きかったに違いない。

さて、そんな経緯からか欧米のメディアは、北京で繰り広げられた派手な外交劇の意味付けに躍起になった。なかでも中国がどんな思惑で二人の首脳を招いたのかについて、強い関心が向けられた。

例えばイギリスのテレビ『BBC』だ。人民大会堂前で行われた歓迎式典で、儀仗隊の前に敷かれたレッドカーペットを歩く米ロそれぞれの様子をテレビを二画面に割って比較し、「見たことのある光景で、歓迎する子どもたちも同じ。振っている旗だけが違う」と分析してみせた。中ロ首脳がほぼ同じ色のネクタイを付けていることまで指摘した。

プーチン大統領の北京訪問をどう取り上げるのか。その報じ方には、それぞれ個性もあったが、それでも中国の思惑という点では、西側メディアのほとんどがほぼ一致した見方を示したのは興味深かった。

その一つが「プーチン大統領は習近平国家主席のプロパガンダに利用された」(BBC)といもの方だ。

BBC特派員は現地からのレポートの最後に「習氏は自分こそが(世界の中で)会うべき価値のある人物だと知らしめるプロパガンダとして(プーチンを)利用するでしょう。これは経済的にも、政治的にも、『すべての道は北京に通ずる』ということを証明する機会なのです」と結んだ。

ドイツのテレビ『ZDF』のキャスターも、「中国は自らは世界の中心だという演出をしました」と解説した。

この「プーチン大統領がプロパガンダとして利用される」という表現は、西側の多くのメディアが使ったものだが、それは中ロがすでに対等な関係ではなくなっていることを前提とした見方だ。これも西側メディアで共有された見立てだ。

例えばBBCは「笑顔の裏では(中ロの)バランスは崩れている。ロシアはウクライナとの戦争で弱体化している」と報じ、アメリカの公共放送サービス『PBS』に専門家として出演したカーネギー国際平和財団のアンドリュー・ワイス氏も、「ロシアはウクライナとの戦争を継続するためにも、または戦争後に軍を立て直すためにも中国が必用」と断じた。

ZDFも、「中国はロシアとの友好関係をアピールしているが、プーチン大統領はいまや習主席に大きく頼らざるを得ない」との視点を披露している。

西側メディアが真剣に取り上げぬ中ロ会談から見えてくる意図

思い出されるのは、米外交誌『フォーリン・アフェアーズ』(2023年6月号)の論文だ。そこには「中国にとってロシアは『必要不可欠なジュニアパートナー』でもある」という表現が見つかる。

なぜ、中国優位の中ロ関係にあって中国にとってロシアが不可欠なのかといえば、それは中国が「地球上もっともパワフルなアメリカとの長期的な対立に備えつつある」からだというのが、この根底には見え隠れする。

これも西側メディアで一致する見方といえるだろう。

例えばBBCは「西側が率いる秩序への抵抗という価値観を共有している」と表現し、ドイツのテレビZDFはより明確に「今回の訪問の目的は、権力と影響力、そして西側世界に対する明確なメッセージを示すこと」と解説している。

先述したワイス氏も、「イランや北朝鮮も含めた権威主義を代表する枢軸を代表する二人は、これからもアメリカに立ち向かってゆくでしょう」と予告した。

だが、中ロは本当にアメリカやその同盟国が担ってきた国際秩序と対抗しようとしているのか、といえば私には疑問だ。

西側メディアは、中ロ両首脳が何を語り合ったのかを真剣に取り上げようとせず、その意図を批判的に報じているが、中ロの会談から見えてくるのは、むしろアメリカが破壊する世界への警戒だ。

習近平国家主席は、会談で「現在、国際情勢は混迷し、一国主義や覇権主義の逆流が横行しているが、平和を求め、発展を図り、協力を促すことが依然として民意の向かうところであり、大勢の赴くところだ」とプーチン大統領に語りかけているが、これはアメリカ批判であって挑戦ではない。

もしソ連崩壊から経済発展した中国が旧ソ連の国々に野心を向けていれば、現在のような中ロ関係にはならなかったはずだ。

その点で中ロは現在の関係を一つの平和のモデルと位置付けている。

この認識柾は、ロシア・ウクライナ戦争の原因をNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大だとする見方と、ロシアの領土的野心に帰結させようとする西側との見解の違いにも似たすれ違いだ。

(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2026年5月24日号より。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録下さい)

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