(CNN) 生きているとはどういうことか――その問いへの答えは思ったより複雑かもしれない。海の生物を研究するカナダのチームが、このほど新たな発見を報告した。
チームは偶然、北大西洋に生息するナマコの仲間「スカーレットプソルス」の体の一部が、切り離されてからも衰えたり死んだりせず、成長している様子に気づいた。
詳細を調べようと、さらにスカーレットプソルスの足や胴体、触手の一部を切り取り、未処理の海水に入れていくつかの実験を行った。すると意外なことに、これらの組織片は自力で修復したり、口がないのに養分を吸収したりすることが分かった。
研究結果は米オンライン科学誌「サイエンス・アドバンシズ」に発表された。ナマコの中には、切断されても一定の条件下で新たな個体に再生する種類がある。だが今回は、独立した個体が育ったわけではない。論文の筆頭執筆者でカナダ・メモリアル大学の博士課程に在籍するサラ・ジョブソン氏によると、チームは「切り出した組織を、愛を込めて『われらがゾンビ』と呼んでいる」という。「死と生の境目ぎりぎりにいるように思えるからだ」
組織片はそれぞれが独立した存在のように見え、細胞の機能は維持しているが繁殖はしない。「繁殖という目的がないのに、こんな小さな組織のかけらが治癒(ちゆ)力を保ち、生き残るのはなぜか。そうさせる進化の要因はなんだろう」と、同氏は問いかける。
動物の中には、自発的に組織を切り離し、再生させる能力を持つ種類も多い。例えばトカゲは、外敵から逃れるためにしっぽを切り離すことが知られているが、しっぽがその後どうにかなるわけではない。ナマコの例は、トカゲのしっぽが自力で治り、林をはい回って栄養を取ったり、何年も生き続けたりするようなものだ。
さらに意外なのは、切り取られた組織がこれまで3年以上も生き延びていることだ。ジョブソン氏によれば、死んだり劣化や壊死が起きたりする気配は全くみられず、「永遠に生き続けそう」な勢いだという。
不死身のナマコ?

ナマコから採取した管足組織の採取後1年後(上)と数年後(下)。傷口の状態が時間とともに変化しているのが分かる/Sara Jobson
ジョブソン氏によると、研究のきっかけは偶然の出来事だった。チームは研究室の水槽で海の生き物を飼育している。実験で必要な時に取り出すが、岩の表面や水槽自体にしがみついて離れない動物もある。今回も、研究者がナマコを取り出した時、管足の一部がガラスに付いたまま残ってしまった。野生の状態でも、ナマコはストレスや外敵の攻撃を受けると管足を切り離すことがあり、すぐに生え変わる。
「その管足が2~3日後も、さらに数週間、数カ月後も張りついたままなのに気づいた」と、ジョブソン氏は振り返る。傷が治り、少し成長までしていた。
無菌の環境ではない。水槽の海水は「ひどく汚れて」いて、細菌や微生物だらけだった。組織片には口も内臓もないのに、海の中のナマコと同じようにアミノ酸を吸収していた。切り離されてから数カ月が経ってもずっと細胞を生成し、免疫システムの活動がみられ、動いたり、つつかれると反応したりしていた。
組織片が不死身だと確認されれば、医学研究や細胞生物学に応用できると、ジョブソン氏は語る。
ヒト由来の不死細胞株としては1951年に子宮頸(けい)がんの患者から採取されたヒーラ細胞があるが、その代替または補完に使える可能性もある。
ナマコの組織は海水の温度上昇や病原体の存在など、海の健全性に関する研究にも活用できる。細胞が外からの助けを得ずに自力で回復し、生き続けられるということは、何かが健康と清浄を保っていることを意味する。細胞がどんなプロセスあるいは化学物質を使っているのかを明らかにする研究が関心を集めるはずだと、ジョブソン氏は指摘する。
同氏は次の段階として、細胞のDNA構造を調べ、復活してから老化が進んでいないかどうか調べる研究を挙げた。「組織片が本当に不死身なのかどうかが、それで確認できる」という。

15 時間前
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