
この記事の要点
- 米SharpLink共同CEO、ETH報酬削減案「EIP-8363」に反対表明
- DeFi基準金利の低下や機関投資家離れを懸念
まずはイーサリアム(ETH)を詳しく
SharpLink共同CEOがETH報酬削減案に異議
米デジタル資産企業SharpLink(シャープリンク)の共同CEOであるジョセフ・チャロム氏は2026年8月7日、イーサリアム(ETH)の改善提案「EIP-8363」に反対する立場をX(旧Twitter)で表明しました。
同氏は投稿で「シャープリンクはこれに反対する」と明言し、DeFi(分散型金融)を支えるETHの利回りを低下させ、ビットコインとの差別化要因まで損なう提案だと批判しています。
EIP-8363では、ステーキング比率の上昇に応じてバリデータ報酬のバーン(焼却)割合を段階的に引き上げ、総供給量の約半分に達した時点で報酬発行を実質ゼロにする仕組みが提案されています。
チャロム氏はこうした報酬設計の変更に対し「提案者たちはイーサリアムを深く信じる真剣な研究者だが、善意の人々も間違えることがある」と述べ、DeFiや機関投資家への影響など4つの理由から反対しています。
「3度目の大変革」プロトコル骨格を再構築へ
ETH報酬削減案への4つの懸念
利回り削減で資本コスト上昇の恐れ
チャロム氏が第一の理由として挙げたのはDeFiへの影響で、コストやインフレを差し引いたステーキングの実質利回りが、DeFi全体で事実上の基準金利として機能していると指摘しています。
この利回りを前提に利用が拡大してきたLST(リキッドステーキングトークン)は、約350億ドル(約5.5兆円)規模が融資の担保として使われていると同氏は説明しました。
LSTを担保とする借り入れではステーキング利回りによって借入コストの一部を相殺できるため、こうした経済性がオンチェーンへの資本流入を支えてきたといいます。
EIP-8363で利回りが削られればこの前提が崩れ、資本コストの上昇によって実質利回りがマイナスに転じるだけでなく、レンディング市場の縮小を通じてソロステーカーや中規模事業者から淘汰される恐れがあると警告しました。
利回りを生むETHの強みが失われる
第二の理由としてチャロム氏は機関投資家の需要を挙げ、ETHはビットコインと異なり、ステーキングによって利回りを得られる「ネイティブに生産的な資産」であり、その特性を評価した投資家から数百億ドル規模の資金が流入してきたと述べています。
こうした資金が流入するなか、ETHがビットコインなど主要仮想通貨を上回る局面で利回りを削減することは、自ら競争優位のひとつを手放す行為にあたると同氏は警告しました。
「報酬は外部流出でなく内部投資」と反論
第三の理由ではバリデータ報酬の意味合いに触れ、ETHの発行はエコシステム外への価値流出ではなく、ネットワークを支える参加者へ資金を循環させる仕組みだと述べています。
実際に発行された報酬はノード運用者やクライアントソフトの保守チーム、開発を支えるファンドなどに渡っており、委員会を介さずにエコシステムへ資金を供給する役割を果たしてきたといいます。
この循環をEIP-8363で縮小させることについて、同氏は価値を「振り向け直すのではなく、破壊する」ものだと批判し、利回りを失った機関投資家によるアンステーク(ステーキング解除)やETH売却を招く恐れがあると警告しました。
シャープリンク自身もこうした資金循環に加わっており、Coinbase(コインベース)などのバリデータを通じてETHをステーキングする一方、ether.fi(イーサファイ)やLinea(リネア)といったDeFiプロトコルにも保有ETHを振り向けていると明かしています。
機関投資家の流入加速期に報酬削減の矛盾
第四の理由としてチャロム氏が問題視したのはEIP-8363が提案された時期で、機関投資家によるイーサリアム採用が加速しているさなかに経済設計を変更することについて「これ以上ないほど時期が悪い」と批判しました。
その背景にはイーサリアム上で実需が拡大している現状があり、すでに約1,590億ドル(約25兆円)のステーブルコインや150億ドル(約2.4兆円)超のトークン化RWA(現実資産)がネットワーク上で決済されていると指摘しています。
こうした利用拡大に金融機関も加わっており、Robinhood(ロビンフッド)がイーサリアムのレイヤー2上に新チェーンを構築し、BlackRock(ブラックロック)もトークン化株式を直接発行したとして「世界最大級の金融機関がイーサリアムを選んだ」と強調しました。
イーサリアムには利用量が一定水準を超えるとETHの供給を減らすバーン機構がすでにあることから、同氏は新たにバリデータ報酬を削減するEIP-8363について、経済・ビジネス上の課題に対する誤った処方だと結論づけました。
ETH機関投資家向け組織が発足
DeFi主要プロトコル創業者も相次ぎ反対
シャープリンクのほかにもDeFiプロトコルの創業者やソロステーカー、研究者からEIP-8363への反対意見が相次ぎ、賛否がコミュニティを二分する展開となっています。
Aave(アーベ)創設者のスタニ・クレショフ氏は「ETHのステーキングを守れ」とXに投稿し、利回りを削減すれば経済的リターンを求める参加者がステーキングから締め出されると主張しています。
一方、ether.fi(イーサファイ)CEOのマイク・シラガゼ氏は提案の進め方を問題視して反対を表明し、わずか48時間の意見募集で大規模な経済設計の変更を進めようとしていることに強い懸念を示しました。
議論の対象となっているEIP-8363は、イーサリアム財団研究者のジャスティン・ドレイク氏を含む6名によって2026年8月4日にGitHub上で提出されました。
現時点ではまだドラフト段階にあり、次期ハードフォーク「Hegotá(ヘゴタ)」への組み入れをめぐって議論が続いています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=157.80 円)
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Source:ジョセフ・チャロム氏X投稿
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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