シティ「トークン化市場は880兆円へ」2030年の金融地図を予測

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この記事の要点

  • シティ、2030年のトークン化資産市場を880兆円と予測
  • 米国株・国債が成長を牽引し、DTCCやNYSEもトークン化対応を推進

シティ予測、2030年トークン化市場は880兆円規模に

米金融大手シティの調査部門Citi Institute(シティ・インスティテュート)は2026年6月、金融資産のトークン化に関する調査報告書「Tokenization 2030」を公表しました。

同報告書は、株式や債券などをトークン化した資産の市場規模が、2030年までに基本シナリオで5.5兆ドル(約880兆円)へ拡大すると予測しています。

現在のトークン化資産市場は約170億ドル(約2.7兆円)規模で1年前の約3倍に拡大しており、予測には幅があるものの、弱気シナリオでも2.7兆ドル(約433兆円)、強気では8.2兆ドル(約1,315兆円)に達するとみられています。

さらに同報告書は、成長を主導するのは米国株や米国債といった公開市場の証券だとしたうえで、普及の背景に市場インフラ大手の参入・オンチェーンマネー・規制の明確化の3要因があると分析しています。

シティが示すトークン化普及の3つの要因

市場インフラ大手がトークン化を中核業務に

シティは、トークン化市場の拡大を支える要因として市場インフラ大手の参入を挙げており、DTCC(米預託信託清算機構)・NYSE(ニューヨーク証券取引所)・Nasdaq(ナスダック)が、発行・取引・決済の中核業務にトークン化を組み込み始めたとしています。

このうちDTCCは、自社が保管する資産のトークン化サービスについて規制当局の承認をすでに取得しており、対象を絞った試験運用に向けた準備を進めています。

NYSEは規制当局の承認を前提に、米国の上場株式やETFを24時間取引できるトークン化証券プラットフォームの立ち上げを計画しており、その決済手段にはステーブルコインの活用を見込んでいます。

Nasdaqはすでに、SEC(米証券取引委員会)の承認を得て、一部の株式やETFをトークン化した形で発行・取引・決済する仕組みを既存の市場構造に組み込んだと伝えられています。

ステーブルコイン拡大とSEC方針が普及を加速

市場インフラ側の対応に加え、ブロックチェーン上で流通する決済資産の増加も普及を後押ししており、シティは決済に使えるステーブルコインの発行残高が2030年までに1.9兆ドル(約305兆円)へ拡大すると見込んでいます。

トークン化された銀行預金とステーブルコインの組み合わせにより、資産の引き渡しと支払いを同時に行う「DvP(証券資金同時決済)」をブロックチェーン上で完結でき、決済リスクを抑えられるとしています。

制度面では、SECが2026年1月、トークン化された証券にも連邦証券法を適用し、デジタル化しても規制上の扱いは変わらないとする立場を示したことが追い風となるなか、米国ではデジタル資産の規制区分を定める市場構造法案「CLARITY(クラリティ)法案」の審議も並行して続いています。

公開株式が577兆円、最大カテゴリーに

トークン化市場の基本シナリオ(5.5兆ドル)のうち、最大の比率を占めるのは公開株式で、その規模は約3.6兆ドル(約577兆円)、うち米国市場だけで約2.6兆ドル(約417兆円)に達すると試算されています。

公開債券は約1.4兆ドル(約225兆円)で、その内訳は米国短期国債(Tビル)が約8,000億ドル、MMF(マネー・マーケット・ファンド)が約6,000億ドルと見込まれています。

一方、不動産ファンドは約2,000億ドル、プライベートクレジットと未公開株式は各約1,000億ドルにとどまり、流動性の低さや相対取引の慣行が普及の制約になるとの見方を示しています。

3つのシナリオが示す市場規模の振れ幅

トークン化市場が普及の進み方に応じてどう変わるのか、弱気・基本・強気という3つのシナリオごとの2030年時点の予測値は以下の通り整理されています。

シナリオ 2030年の市場規模予測
弱気 2兆7,000億ドル(約433兆円)
基本 5兆5,000億ドル(約882兆円)
強気 8兆2,000億ドル(約1,315兆円)

こうした試算の前提として、シティは2030年までに米国のTビル市場の約10%、米国の公開株式市場の約3%がトークン化されると想定しています。

ステーブルコイン市場の拡大は、その裏付けとして保有される短期国債の購入を通じて、約1兆ドル(約160兆円)規模の新たな米国債需要を生むとみられています。

加えて、米国の個人投資家の約10%がオンチェーンの取引手段を使うようになれば、公開株式だけで約2.6兆ドル(約417兆円)の需要が生まれると試算されています。

短期は併存型が主流、相互運用性の確保が課題

シティは、トークン化が既存市場を短期間で全面的に置き換えるのではなく、当面はトークン化された仕組みと従来型のシステムが併存する「ハイブリッド型」が主流になるとみています。

併存する期間は記録や決済を二重に管理する必要から運用が複雑になりやすく、効率化の効果を十分に発揮するためにはシステム間の相互運用性の確保が欠かせないと説明しています。

こうした環境下では、発行から流通、決済までを一貫して担う「構造的オーケストレーター」が優位に立つとされ、一部の銀行や資産運用会社、ステーブルコイン発行体が参入を進めています。

共通規格と流動性集約が普及拡大の分岐点に

規制の明確化は米国だけでなく主要な法域で進みつつあり、シティは次の成長段階の条件として、規制の確実性やプラットフォーム間の相互運用性、機関投資家の参加拡大を挙げています。

実際に、トークン化された米国債やMMFといった実物資産(RWA)はすでに複数のブロックチェーン上で発行が進み、機関投資家と個人投資家の双方で利用が広がっています。

ただし、利用するブロックチェーンや決済資産が分かれたままでは流動性が分散するため、共通規格づくりと流動性の集約が今後の課題になると、シティは指摘しています。

2026年後半にはDTCCとNYSEによる試験運用の開始が予定されているほか、上院ではCLARITY法案が通過するかを巡る審議が続いています。

※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=160.40 円)

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Source:「Tokenization 2030」報告書
サムネイル:AIによる生成画像

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