カンブリア爆発の後押しは大量の「うんち」だった——最も奇妙な新理論「糞便革命」

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うんちの化石が語る「消化管の革命」

うんちの化石が語る「消化管の革命」うんちの化石が語る「消化管の革命」 / Credit:Canva

毎日誰もがトイレで水に流しているうんち。

あまりに当たり前の存在すぎて、それが地球の歴史を動かした主役級の存在だったなんて、普通は考えもしません。

しかし化石記録を丹念にたどると、この「当たり前」が当たり前でなかった時代が確かに存在します。

たとえば約6億年前のエディアカラ紀には、すでに地球最初の動物たちが登場していました。

ところが奇妙なことに、この時代の地層からうんちの化石は1つも見つかっていません。

動物がいたのに、うんちがないというのは不思議に思えますが、実はまとまったうんちは「動物ならみんな出せる」ものではありません。

エディアカラ紀の大半にわたり生物たちは、水中の有機物をこし取ったり、海底の微生物マットをなめ取ったりする食生活が中心でした。

消化していた痕跡が残る化石はいくつかあるものの、口と肛門が管でつながった貫通型の消化管を持っていたという確かな証拠は、エディアカラ紀の最末期になってようやく現れる程度です。

つまり多くの生物は、現代のクラゲやイソギンチャクのように、口から食べて口から食べかすを吐き出す単純な消化システムだったとみられます。

しかし口から食べて口から吐き出すという仕組みでは「うんちを溜めて出す」という方法がとれません。

入口と出口を口が兼ねている生物では、次の食事をするために、前の残りカスを先に吐き出さなければなりません。

残渣を溜めておくことが、次の摂食を邪魔するのです。

だから少量ずつ、頻繁に吐き戻すことになります。

目に見えないほど小さな食べ物を取り込み、目に見えないほど小さな食べかすを吐き出していたのでしょう。

こうなると「うんちの化石」など望むべくもありません。

まとまった形の糞を作るには、口から食べて肛門から出す貫通型の消化管の進化が必要なのです。

口と肛門が管でつながることで、食べ物は一方向に流れながら消化管の中で圧縮され、まとまった形の糞として一度に排泄できるようになります。

「単に化石として残らなかっただけでは?」という疑問も当然ありえますが、カンブリア紀のうんちの化石は、保存状態が特別に良い地層だけでなくごく普通の地層からも見つかっており、保存のされにくさだけでエディアカラ紀の「うんちなし時代」を説明するのは難しいと研究チームはみています。

状況が一変するのは、カンブリア紀が始まる約5億3900万年前。

世界36カ所の地層から得られた証拠によれば、このタイミングで最初のうんちの化石が出現し、時代が進むにつれてその姿はどんどん豊かになっていきます。

糞便革命がカンブリア爆発を促した糞便革命がカンブリア爆発を促した / 左側がうんちがない世界で閑散としている。右側がうんちがある世界で多様な生命にあふれている/Credit:Surprising new theory for leap in evolution

最初期のうんちの化石は顕微鏡でなければ見えないほど小さな粒でした。

それがやがて、砕けた貝殻や他の動物の破片をぎっしり含んだ数センチ大の塊にまで大型化・多様化していくのです。

このうんちの進化は、体の内側で起きていた革命と表裏一体でした。

同じ時期、特に初期の節足動物では、より多様な食べ物を処理できる専用の消化器官(前腸や消化腺)が発達し、消化の仕組みが一気に高度化していったことが化石からわかっています。

大きく硬い食べ物さえ処理できる「高性能な腸」の登場が、中身の濃い大きなうんちを生み出し始めたのです。

つまりうんちの化石は、単なる排泄の痕跡ではありません。

動物たちが「何を食べ、どう消化していたか」という進化の歩みを刻んだ、時代の証言者だったのです。

そして研究チームは、この大量に生み出され始めたうんちが、海の環境を作り変える大きな力になったと主張します。

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