
この記事の要点
- FSBがAI・ステーブルコイン含む5分野の報告書をG20に提出
- ステーブルコインの越境リスク監視強化を各国に要請
まずはステーブルコインを詳しく
G20にステーブルコイン・AIリスク報告
金融安定理事会(FSB)のアンドリュー・ベイリー議長は2026年10月12日、AIやステーブルコインが金融システムに及ぼすリスクを指摘し、15日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議に向けた書簡を公表しました。
書簡では、国債市場の変動やプライベートクレジットの脆弱性に加え、AI関連の市場評価が見直されることで金融市場全体の調整につながる可能性や、AIを悪用した高度なサイバー攻撃が主要金融機関や市場インフラを脅かすおそれが指摘されています。
ステーブルコインについても、国境を越えた利用が拡大する一方で、各国の規制や監督体制の連携が十分に確立されておらず、金融犯罪や危機発生時の対応に課題が残ると警告しました。
これらのリスクへの対処に向けて、FSBは米国が議長国を務めるG20からの要請を受け、AI、ステーブルコイン、規制・監督の近代化、金融改革の実施状況、銀行破綻時の公的資金支援という5分野の報告書や関連文書を提出しています。
ベイリー議長は金融システムの安定を守るために国際協力が不可欠だと強調しており、仮想通貨(暗号資産)分野でも、各国の規制が異なるなかでステーブルコインの安全な越境利用を確保する必要性を訴えています。
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FSB報告書が示すステーブルコイン・AI・規制の課題
ステーブルコイン越境利用、監督体制に穴
FSBが公表したステーブルコインに関する報告書では、複数の国や地域で利用されるグローバル・ステーブルコインについて、単一国の当局だけでは金融安定上の脆弱性を十分に把握・評価できないと指摘しました。
その要因としてFSBは、発行や運営に複数の事業者が関わり、それぞれ異なる国の規制を受ける構造に加え、海外発行ステーブルコインに対する監督権限や規制の適用関係が不明確な点を挙げています。
こうした監督上の問題は経営危機や破綻時にも及んでおり、当局間の協力や責任分担、危機管理体制が十分に確立されていない点も報告書で指摘されています。
FSBは今後、2023年に策定したグローバル・ステーブルコインに関する勧告の実施を促すとともに、国境を越えた危機への備えとして各国当局の協力を深める方針です。
AI活用する金融機関にFSBが指針提示
FSBはステーブルコインの越境リスクに加え、金融機関によるAIの導入も金融安定上の重要な課題と位置づけ、責任あるAI導入に向けた「健全な実務指針」を最終化しました。
この指針は、2026年6月10日に公表された12項目の案への意見を反映したもので、組織全体のAIガバナンスから開発・運用段階のリスク管理、サイバー攻撃や外部委託先への対策までを対象としています。
ただし、FSBは金融機関ごとに規模や業態、AIの導入状況が異なることを踏まえ、指針を一律の義務ではなく、それぞれの状況に応じて利用する任意の手引きと位置づけています。
ベイリー議長は、AIの急速な発展によって金融市場や金融機関への影響が変化する可能性を指摘し、安全な導入に向けた取り組みを2027年もFSBの主要議題として継続する考えを示しました。
金融規制の近代化、銀行破綻対応に課題
AIやステーブルコインなどの新たなリスクへの対処と並行して、FSBは既存の金融規制・監督体制の見直しにも着手し、より効果的かつ効率的で、リスクに焦点を当てた枠組みに関する協議報告書をG20に提出しました。
規制・監督の近代化に関する報告書は2027年に最終化する予定で、FSBは既存の金融改革についても、ランダル・K・クォールズ元FRB副議長が率いるG20実施監視レビュー(IMR)を通じて、政策の策定段階から各国での実施を促す方法を検証しています。
金融改革の実施上の課題としては、銀行破綻時の公的資金支援に関する報告書で、システム上重要な銀行の破綻処理を支える一時的な資金供給体制に制度上の不足が残っていると指摘しました。
FSBは、こうした制度上の不足がシステム上重要な銀行の秩序ある破綻処理を妨げる可能性があるとして、各国に支援体制の確立を求めるとともに、報告書の勧告に沿った改善を促す方針を示しています。
ステーブルコイン報告枠の新設を提案
主要3市場でSC規制が確立、次は越境対応
ステーブルコインをめぐっては、米国で2025年7月18日に「GENIUS(ジーニアス)法」が成立し、決済用ステーブルコインの発行体を対象とした連邦規制の枠組みが法制化されました。
EUでも暗号資産市場規制(MiCA)のステーブルコイン関連規定が2024年6月30日から適用され、日本では2023年6月1日に電子決済手段等取引業に関する制度が開始されるなど、主要市場で規制の枠組みが形成されています。
米欧日で制度構築が進んだものの、規制の対象や適用方法は国・地域によって異なっており、FSBが求める国際的な監督協力には、こうした制度間の違いを踏まえた調整が必要となっています。
FSBは10月15日にバンコクで開かれるG20財務大臣・中央銀行総裁会議に向けて、2023年勧告の実施や当局間の情報共有を求めており、各国の制度を越境的な監督体制につなげるための協議が今後も続く見通しです。
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