
この記事の要点
- BNYがトークン化ファンドの権利管理サービスを開始
- ファンド持分をブロックチェーン上で直接管理する仕組みを導入
ファンド権利を完全オンチェーン化
世界最大級のカストディアンである米国金融大手バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNY)は2026年7月29日、トークン化ファンド向けの新サービス「Digital Transfer Agency(デジタルTA)」の提供を始めたと発表しました。
同サービスでは、ファンドの法的な権利と経済的価値をパブリックブロックチェーン上で直接管理し、外部台帳を介さずチェーンそのものを正式な帳簿として運用するとしています。
帳簿と権利がチェーン上で一体化することで、申し込みと解約は法定通貨とステーブルコインの双方に対応し、投資家同士がファンド持分を直接移転できる設計となっています。
この仕組みを最初に採用する発行体には、BNY傘下のDreyfus(ドレイファス)、英Baillie Gifford(ベイリー・ギフォード)、米BlackRock(ブラックロック)の3社が名を連ねています。
日本、オンチェーン金融を成長戦略に
オンチェーン型ファンドの構造と3社の展開
「複製」ではなく「原本」をチェーンに
デジタルTAを採用するファンドが従来型と大きく異なるのは、持分の記録を管理する場所であり、これまではデジタルで複製したトークンを流通させる「ミラートークン」型が主流を占めてきました。
一方、デジタルTAは発行時点から帳簿と記録をチェーン上へ直接置き、写しではなく本体を所有権と取引データの「唯一の情報源」としてオンチェーンで一元管理します。
この仕組みについて、アセット・サービシング部門グローバル責任者のエミリー・ポートニー氏は「トークン化・流通・カストディ(資産の保管)を統合した拡張性のある基盤で、金融市場の将来を支える」と述べました。
同氏は、この基盤を通じてRWA(現実資産)の持分を複数の国・地域と複数のブロックチェーンをまたいで移転できるようになると語っています。
先行3社が手がける3種のトークン
この仕組みを最初に採用する3社は、それぞれ異なる用途のトークン化ファンドを投入するものの、いずれもMMF(マネー・マーケット・ファンド)や短期債券を運用対象としています。
| Dreyfus(ドレイファス) | BLIQUID | ファンド持分を表すトークンで運用する、発行時点からデジタルで設計されたMMF |
| Baillie Gifford(ベイリー・ギフォード) | BAGEY | 英国規制下で初となる完全オンチェーン型の公募ファンド(提供済み) |
| BlackRock(ブラックロック) | BSTBL | ステーブルコイン準備金の要件に対応するトークン化シェアクラス(予定) |
このうちベイリー・ギフォードはBNYと共同で商品を設計し、2026年6月22日にイーサリアム(ETH)とソラナ(SOL)の上でBAGEYの提供を始めました。
BAGEYは短期の事業債を組み入れる英国籍のOEIC(オープンエンド型投資会社)で、英国・スイス・ケイマン諸島の適格投資家に年約7%の利回りを示しています。
一方、ブラックロックが計画するBSTBLはステーブルコイン発行体を主な利用者に想定し、現金と残存93日以内の米国債で運用する約61億ドル(約9,960億円)規模の既存ファンドを基盤としています。
同社は2026年5月8日にSEC(米証券取引委員会)へ申請を提出し、この既存ファンドへイーサリアム上のトークン化シェアクラスを追加する計画を明らかにしました。
伝統資産とトークン資産を一元管理
こうしたトークン化ファンドを支える基盤として、デジタルTAはカストディやステーブルコイン対応、トークン化預金などで構成するBNYのデジタル資産サービス群に組み込まれています。
これらのサービスは同社の基幹記録システムと直接接続しており、伝統的なファンドとデジタルネイティブなファンドの持分を一つの台帳で管理できる仕組みとなりました。
一体運用の狙いについて、最高製品・イノベーション責任者のキャロリン・ワインバーグ氏は「伝統的サービスと同じ運用の厳格さ・透明性・信頼を、デジタル市場の革新と組み合わせる」と述べています。
提供先は当初、米国と英国で選ばれた顧客に限られるものの、2026年第1四半期時点で投資家口座数761万件を抱えるBNYの顧客基盤が、そのまま一元管理の対象に広がります。
SEC、4領域でルール整備着手へ
トークン化インフラの整備が本格化
市場全体でもトークン化を支える基盤整備が進んでおり、米DTCC(預託信託清算機構)は2026年7月15日、ブラックロックなど30社超とともに実際の本番取引を処理したと公表しました。
この本番取引で利用したトークン化サービスは2026年10月の開始を予定しており、DTC参加者が保有する証券を従来型とトークン型の間で相互に変換できる仕組みを提供します。
こうした仕組みが導入されることで、既存の証券インフラを活用しながらトークン化資産を取り扱える環境が整い、トークン化ファンドの実用化を後押しすることが期待されています。
DTCCのサービス開始やブラックロックのBSTBL計画など、トークン化ファンド市場を支える取り組みは同時並行で進んでおり、市場では実用化に向けた動きが加速しています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=163.48 円)
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Source:BNY発表
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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